2007年12月30日日曜日

タンゴが我が国に流行しない理由

タンゴが我が国に流行しないのにはそれ相當の理由がある。
 
 第一にタンゴ音楽を演奏し得るバンドがない。
 第二にタンゴに適した踊り場がない。
 第三に就てタンゴを学ぶ可き良師に乏しい。



森潤三郎という人によって1930年代の日本で書かれた「アルゼンチンタンゴの踊り方」という作品の冒頭である。

森鴎外の弟と同姓同名なのでもしかしたら本人かもしれない。



彼の「たんご」という作品にはこんな文面が見られる。


 タンゴは元来アルゼンチンの民謡、音楽、並に舞踏(この三者は恒に不可分の関係にある)であって、
 その演奏はアルゼンチンの人間に限るのである。
 アルゼンチン以外の楽手ではタンゴ特有の味と辛辣さとが出て来ないのである。
 その技巧を学び得てもその精神をつかむことが不可能らしい。



もちろん、舞踏についても同様の思想が見え隠れする。
当時渡亜した日本人とアルゼンチン人の会話の引用らしい。


 『それでは判りにくい。も少し規則的に教へろ』と云ふと
 『私達は小供の時からタンゴ計りを聴いています。
 そして、それに合はせて歩いていますから、タンゴを耳にしさへすれば、
 足が自然に動き出すのです。従って、自分で踊って見せる以外別に規則だとか、
 ステップだとか云ふものは存じません。つまりどう云ふ風に踊るかと云ふこと
 をお教へは出来ないのです』と云ひましたよ。



タンゴはアルゼンチンの人間にしか成し得ない

という一つの考え方がそこにあったと思われる。




あれから80年近く経って、
アルゼンチン以外の国でも少なからず形を変えるなり何なりで
タンゴが流行しているとは言えないまでも普及しつつあるし、
アルゼンチン国内でさえも、日本で言えば相撲にモンゴル人の横綱が現れたような現象が実際にある。



森氏自身は目賀田男爵(アルゼンチンタンゴを日本に最初に持ち込んだとされる伝説の人物)のダンス弟子でもあったようだ。


 日本に於いて社交ダンスを健全に発達せしめんがためには、
 これを先づ家庭に取り入れ、而して後、次第にその範囲を拡大して、
 一般社交に及ぼすを上策と信じるからである。




つまり当時の日本にあった形で、目賀田ダンスのような形をとって「アルゼンチンタンゴが流行しない3つの理由」が克服されたと解釈すればよいだろうか。

ヨーロッパなどでも社交ダンスとして形を変えて普及していったタンゴダンスの一つのルーツがそこにあったようだ。





その時代から随分と時間が経って、
今現在、社交ダンスとは全く違う形でアルゼンチンタンゴダンスが普及していて、
そのルーツには幾説もあり真相はいざ知らずであるが、



今、私の口から無難に言う事が出来るとすれば

1930年代とは違って、
アルゼンチン現地から持ち込まれるダンスが
そのままに近い形で日本で受け入れられるようになってきた、

ということで結果的には
森氏が語ったアルゼンチンタンゴが流行しない3つの理由とされた事象が克服されつつあるのかもしれない。



もう一つおまけに言えば、
今まさに、アルゼンチン固有の民謡・音楽・舞踏という物が、
日本でも改めて回帰して融合し得るタイミングなのではないか、と勝手に思ったりもしている。

2007年10月2日火曜日

ミロンガを歌う女性 ~ Cafe Homero

強盗に遭った日の夜も

カフェ・オメロという喫茶店にて

やはりタンゴ満喫でした。


演奏が始まりました。


ピアソラかと思いきや

割と古典的な曲がかかったり

突然ダンサーが出てきたり


誰が主役か

良く分かりません。

が、

この真ん中の何とも強烈なオーラの女性
これが今日の主役


肉厚のおなかを
網でつつみつつ

歌を奏でる。

その震える喉うらに
やはりタンゴの影か

うん。
まさにミロンガを聞く心境

単なる明るく楽しい歌なんじゃない。

ブエノスアイレスの眼差しに見つめられて
新しい境地に達した気がする。

勘違いかも

今も鮮烈に思い出されるのが

Milonga De Mis Amores と Se Dice De Mi

ミロンガを歌う女性の声もいいね。

Zully Goldfarb
AROMATANGO

Zully Goldfarb


Cafe Homero
Palermo Cabrera 4946
Informes y Reservas: 4775-6763 / 15-5156-5457
cafehomero@hotmail.com
Como llegar: 34-55-57-140-142-151-168

2007年9月30日日曜日

イケメンタンゴバンド ~ Viceversa Tango

イケメン好きの貴女にはたまらない


という触れ込みかどうか知らないが、

Castelar Hotelというホテルで無料コンサートがあるというので行ってみました。


入ってみるとなにやら物凄く賑わっていて
結構なイケメンが集まってタンゴを弾くという。

しかも割とイケメンたちがシャキッとしている割に
何かチャラチャラした女の子たちが仲間にいるので
なんとなくどうなんかな?って雰囲気。

みんな20才行くか行かないかぐらいかな


ってことで、あんまし期待してなかったのだが・・・

そんな「無料だからまぁとりあえず聞いてみようか」的な考えが

演奏が始まったところで吹き飛んだ。

おお!
↑感想はそれだけかよ

実際に聞いてみると顔はともかく、見事な編曲でしたよ。

となりのポルテーニャを名乗るおばさまは
真顔で「彼らは素晴らしい」とかなんとか言っていた。

本当に新しい勢いのあるタンゴでした!!


ちなみに別に私はイケメン好きではない

★で調べてみると期待の新人らしい
VICEVERSA TANGO

Viceversa Tango

2007年9月28日金曜日

大道芸 ~ ブエノスおまけ写真

ブエノスには日常にタンゴがあふれていました。


フロリーダでの大道芸


フロリーダでの大道芸2


サン・テルモでの一幕


サン・テルモでの一幕


ドレーゴ広場での大道芸


ドレーゴ広場での大道芸2

2007年9月27日木曜日

ファビオ・ハーゲルの演奏 ~ カフェ・トルトーニにて

ポケモンさんに
ハーゲルがトルトーニで聞けるという情報を聞き
行ってみた。


カフェ・トルトーニ - Cafe Tortoni

目の前で、しかも15ペソですよ。
それにしても日本人が多く集まってましたが。


Fabio Hager y Tango del Sur

↓ハーゲル氏の立ち演奏

Fabio Hager

★「ブエノス・タンゴ」は記憶に新しい





ファビオ・ハーゲル&タンゴ・デル・スール「ブエノス・タンゴ」
ファビオ・ハーゲル
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2007年9月23日日曜日

ブエノスの野外ミロンガ ~ La Glorieta

ブエノスに中華街があると聞きつけて、
ついでにその近くでやっていた La Glorieta という野外ミロンガに行ってみました。

アルゼンチンの鉄道(TBA)にて Retiro から Tigre行きに乗って2?3駅 Belgranoで降りて目の前の公園でひっそりとやっています。

または、中心街から行くならば、アルゼンチンの地下鉄(Subte)の D線に乗って終点の手前の Juramentoから海側へ歩いて10分くらいで公園があります。

鉄道は1ペソ(40円)、Subteは0.75ペソ(30円)でしたか。
ちなみに普段から小銭を作る心がけがないと乗るのが難しいようです。






↓Subteはこんな看板↓鉄道はこんな感じ↓Retiroの駅(ご参考までに)

広い公園の中で看板も出ていないので、どこでやっているのかさっぱり分からないのですが、頼りはあなたの耳だけです。

良く耳をすませば、馴染みのあるビアジなんかがうっすらとかかっています。

音をたどっていくとやがて白くボンヤリと光る円形の建物で無数の人間がうごめいているのが見えてきます。


かけつけたのは夜なので写真を見てもどんな感じか分からないかもしれませんが、こんなホームページにおおまかな形が見られます。


ああ、恍惚とみんな踊っていますが、われわれも負けません。


やっぱり野外が好き。

ぜひ、ブエノスに行った際は、お試しください。入場料はカンパのみです。

Organiza: Marcelo Salas
Milonga: sabados y domingos a las 18hs. (土曜・日曜 18:00?)
Clases: sabados y domingos a las 16 hs. (土曜・日曜 16:00?18:00)
Profesor: Marcelo Salas
Precio: milonga a la gorra, clases consultar precio
情報元:http://pythia.uoregon.edu/~llynch/Tango-L/2005/msg00059.html

日本でも氷川丸や月島、代々木公園などで野外ミロンガが定期的に行われていたりしていますね。靴やスピーカーの問題がありますが、どんどんこういう場は増えて行って欲しいものです。

あ、そうだ。

中華街自体は、まぁまぁ。というか、行ってからのお楽しみ、って感じ?日本料理屋さんや韓国料理屋もあったので困ったらそっちに入った方が良いやもしれません。



中華街は意外と狭いので、あまり区画を周りすぎると例によって危険な区域に行ってしまうかもしれませんので、ゼヒご注意を。

2007年9月21日金曜日

フォルクローレの里 ~ もう一つのアルゼンチン

何を隠そう。

実際、フォルクローレはどうなのよ?

ピンと来てなかったんだよね。

でも、

↓こんな風景を見るにつけ、ああなんだかそういう空気の元で生まれた音楽なんだなと思うに至り、

ウマワカ渓谷


ウマワカ渓谷2

↓こんな動物を見るにつけ、ああなんだかこんな暖かい目で見つめてくれる心を感じるに至り、

リャマ


アルパカ

↓こんな町並みを見るにつけ、ああなんだか洗練された時間の流れた跡を垣間見るに至り、

フフイのどこか


フフイのどこか


フフイのどこか

↓こんな賑わいと共にするにつけ、ああなんだか本当はみんな楽しむことを求めているのだと考えるに至った。

ペーニャ1


ペーニャ2


ペーニャ3

ああ、これもアルゼンチンなんだな。

2007年9月20日木曜日

ブエノスで遭った強盗の眼差し

まずはこの写真をご覧ください。




泥臭く朽ちた民家、干からびた道、
良く見ると鳥がブラブラしていたり
暗い部分には人影が。。


まぁ、この写真自体には
別に何かあるわけではないのですが、
要は、場所が結構ヤバイ地域だったらしく、
こんなところの写真が撮られていることが有り得ないみたいな。


でもって、
案の定、この写真を撮って左を向いて5秒後には
ピストルを突きつけられていました。



そう、ここはアルゼンチンのブエノスアイレスでも有数の観光地、ボカの一角でした。
サッカーで有名なボカ・ジュニアーズの本拠地、
そして、アルゼンチンタンゴ発祥でおなじみ、カミニートなどのある場所。


ボカ・スタジアム(ボカ・ジュニアーズの本拠地)


カミニート


ボカ地区の多くの部分はスラム化しており、
ある警官曰く「俺はあんなところイカねぇ」って感じのところでしたが
聞くところによると、住民は生活を変えたがらないそうです。


逆に言えば、
アルゼンチンタンゴが生まれた時代のボカを伺い知ることができた。
などと前向きに捉えている今日この頃です。



あの強盗の強い眼差し。
今でも忘れられません。

犯罪行為、そして命を顧みない行為、
決して許せるものではないのですが、
彼らが辛い生活・歴史を背負ってきたにせよ、そうでないにせよ、

これがアルゼンチン、まさに現実。



そう。
凄みのある、圧倒的なダンサーにも
似たような強い眼差しを感じることがあります。

決して蔑んだ意味ではなくて。


身震いの来るアベジャネーダ橋


そうそう。
最後に一言。

私を筆頭とした
あまり調べもせずに「地球の歩き方」片手にブエノスへ行こうとしている皆様、
一区画の違いが命取りです。


知らない場所で乗り物から降りるのは自殺行為です!

168番のバス(コレクティーボ)


たとえば単にボカ行きだからといって、↑こんなバスに終点まで乗ってしまうとアウトです。地獄の一丁目行きでした。
おそらく現地出身の人じゃなくて外国出身の人に聞いた方が身のためです。


それから、タクシーは RADIO TAXIが目印だそうです。(だからといって確実ではないです)